大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)44号 判決
【主文】
一 被告は、別紙目録(三)記載の(1)ないし(3)の標章を同目録記載の商品又はその商品の容器、包装に附して販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告は、前項記載の標章を前項記載の商品に関する広告、定価表又は取引書類に附して展示し、又は頒布してはならない。
三 原告のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用はこれを五分し、その二を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
【事実】
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は次の登録商標(以下「本件商標」という)の商標権を有している。
登録商標 別紙目録(一)記載のとおり。
出願 昭和三四年一二月八日(商願昭三四―三五七七三)
公告 昭和三五年五月一〇日(商公昭三五―九〇二〇)
登録 昭和三五年九月三〇日
登録番号 第五五七四八五号
指定商品 旧第二類、染料、媒染料、化粧用染料、化粧用顔料、顔料及び飲食用顔料
登録更新 昭和五六年七月三一日
2 原告は、各種染毛料、頭髪化粧品、デオドランド(消臭)製品、香水等の製造販売を業とする株式会社であり、昭和三七年五月より、本件商標をその要部として構成された別紙目録(二)記載の標章を、その製造する染毛料に附して販売しており、その販売額は過去数年間二億円を上廻る額に達しており、原告の販売する主力商品の一つとなつている。
3 被告は、化粧品及び歯磨の製造販売を業とする株式会社であり、昭和五七年一〇月から別紙目録(三)記載の標章(以下それぞれ「イ号標章(1)、(2)、(3)、(4)、(5)」という)を、同目録(三)記載の商品たる化粧品(化粧水、栄養クリーム)及びその容器、包装に附して販売を開始し、右標章を右商品のカタログ等に附して頒布し、宣伝を行つている。
【理由】
一請求原因1の事実(原告が本件商標の商標権を有すること)は当事者間に争いがない。
二<証拠>によれば、原告は昭和三七年ころから本件商標をその一部とする別紙目録(二)記載の標章を、その製造する染毛料の容器及び包装箱に附して販売していることが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
三被告が化粧品及び歯磨の製造販売を業とする株式会社であり、イ号標章(1)を使用していること及びイ号標章(2)(3)をカタログ及び広告のみに使用していることは当事者間に争いがない。
そして、本件全証拠によるも被告がイ号標章(2)(3)を容器、包装に使用している事実を認めるに足りるが、弁論の全趣旨によれば、被告はイ号標章(2)、(3)は本件商標の商標権を侵害しないと主張して争つていることが認められ、将来イ号標章(2)、(3)を容器、包装等にも使用するおそれがあるということができる。
ところで、原告は被告がイ号標章(4)、(5)を使用していると主張するが、本件全証拠によるも右事実を認めるに足りない。むしろ、<証拠>により認められる被告が使用している文字は、「プラスキンロイヤル」「プラスキン<ロイヤル>」の同一間隔で一連に書されたものであつて、「プラスキン」と「ロイヤル」の間に間隙のあるイ号標章(4)、(5)とは異なつている。
四そこで本件商標と各イ号標章とを対比する。
イ号標章(1)は「PLASKIN」と「Royal」の西欧文字を上下二段に横書き併記してなるものであつて、「Royal」は肉太で大書きしており、「PLASKIN」は細く小書きしている。そして「Royal」はローヤルと発音され、「王の、高貴な」との意味があり、「PLASKIN」はプラスキンと発音されることは明らかである。
ところで、原告はイ号標章(1)のうち「Royal」が要部であると主張するのに対し、被告は右部分は等級を表わす一般用語で標章の要部とすることはできない旨主張する。そこで按ずるに、<証拠>によれば、他社の化粧品の包装箱、容器に「ROYAL」或いは「ROYALLE」を含む文字が表示されていることが認められるものの、<証拠>によれば、「ROYAL」「ローヤル」「ロイヤル」が他の指定商品につき商標出願公告されていることが認められ、右事実に照らすと前記「Royal」が一般用語であると認めることはできず、イ号標章(1)は前記のとおり「Royal」の部分を肉太で大書きして外観上見る者の注意を強く引く構成をとつており、右標章からは「Royal」(ローヤル)の称呼、観念を生ずるというべく、右標章の要部は「Royal」にあると認めるのが相当である。
そして、本件商標は「ROYAL」「ローヤル」の西欧文字及び片仮名文字を上下二段に横書き併記してなるものであるから、前記イ号標章(1)の要部は、これと同一の称呼、観念を有しており、全体として類似するというべきである。そして、かかる標章が本件商標の指定商品と同一又は類似の商品等に使用された場合その商品の出所につき誤認混同を生ずることは明らかである。
イ号標章(2)は、イ号標章(1)を四角の丸くなつた略長方形の枠で囲んだ標章であり、その要部はイ号標章(1)と同様に「Royal」にあると認められるから、結局本件商標と類似する。
イ号標章(3)はイ号標章(1)のうちの「Royal」の部分のみであり、結局本件商標と類似する。
五そこで別紙目録(三)記載の商品が指定商品と類似するか否かについて検討する。
商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく、二つの商品に同一又は類似の商標を使用したとき、同一営業主の製造又は販売にかかる商品であると誤認混同されるおそれがある場合にはこれらの商品は類似の商品にあたると解するのが相当であり、これを本件についてみるに、指定商品は婦人者層を対象とし、化粧品店等で販売される商品であるのに対し、被告商品は同一の需要者層を対象とし同一店舗で販売されることがあることを考慮すると、被告商品にイ号標章を使用するときは原告において右商品を製造又は販売しているものと一般人に誤解されるおそれがあると言うことができ、したがつて、指定商品と被告商品とは類似する商品ということができる(なお、指定商品と被告商品は現行商標法施行規則の区分では同じ第四類の化粧品の項に属している)。
ところで、被告商品の化粧品は旧第三類に属しており、本件商標の指定商品とは類別を異にしていたところ、被告は旧分類で区分を異にしていた被告商品には本件商標の効力は及ばないと主張する。しかし、指定商品の区分は商品類似の範囲を定めるものではなく、また区分そのものも経済や社会生活の変化発展にともない変化するものであるから、旧分類で区分を異にしていたからといつて現在もなお類似でないとすることはできず、被告の右主張は採用できない。
六よつて、本訴請求のうち、被告に対しイ号標章(1)ないし(3)の使用禁止を求める部分は理由があるからこの限度で認容し、その余は理由がないから棄却する。
(潮久郎 鎌田義勝 徳永幸藏)